6〜7月の初夏の気配を感じ始める頃
くちなしの花が咲きます。
くちなしの花は、短命ですが
辺りいっぱいにその香りを漂わせます。
「くちなし」といえば、1965~1971年に髙田三郎が作曲した、
歌曲集「ひとりの対話」に収められています。
詩をご紹介します。
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くちなし
荒れていた庭 片隅に
亡き父が植えたくちなし
年ごとに かおり高く 花はふえ
今年は十九の実がついた
くちなしの木に
くちなしの花が咲き 実がついた
ただ それだけのことなのに
ふるえる ふるえるわたしのこころ
「ごらん くちなしの実を ごらん
熟しても 口を開かぬ くちなしの実だ」
とある日の 父のことば
父の祈り
くちなしの実よ
くちなしの実のように
待ちこがれつつ
ひたすらに こがれ生きよ と父はいう
今も どこかで父はいう
高野喜久雄・詩
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髙田三郎はこの曲をあくまで独唱曲として考えていましたが、
合唱版も出版されました。
じっと口をつぐんで、内面の熟を待つ。
お父さんからの
メッセージをみなさんはどうとらえますか?